イノベーターインタビュー キリン株式会社 キリン絆復興プロジェクト
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    キリン株式会社 キリン絆復興プロジェクト

    2011年7月からキリングループがスタートさせた東日本大震災復興支援プロジェクト。3年間で約60億円を拠出し、被災地の皆さまの“地域社会の絆”“家族の絆”を深めることをテーマに、『地域食文化・食産業の復興支援』『子どもの笑顔づくり支援』『心と体の元気サポート』の3つの幹で一貫した復興支援活動を行ってきた。現在は、当初計画していた3年間の期間を経過しているが、現状を踏まえ活動を継続。復興が進むにつれて変化していくニーズを捉えながら、未来につながる絆を育んでいる。

東日本大震災以降、数多くの企業・団体が復興支援に乗り出しています。その中において、キリングループが進める『復興応援 キリン絆プロジェクト』は、地域産業への支援や次世代の優れた人材の育成など、東北がもともと抱えていた社会課題そのものへのアプローチへと変化していきました。その活動は、被災地の復興に貢献するとともに、企業の成長にもつながる被災地との「共有価値の創造(=CSV:Creating Shared Value)」の実現に向けて、引き続き、活動を推進していくことを目指しています。
キリングループが一丸となって取り組んでいる農業と水産業の支援。プロジェクトチームを代表して、チームリーダーの野田哲也さんと、被災地の最前線で支援活動を行っている古賀朗さんに、お二人だからこそ感じている、東北の未来の可能性について、お伺いしました。

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「あくまでも大震災からの復興を目的にはじまったプロジェクト。開始時点ではとにかく復興支援という思いで、CSVという考え方は全くありませんでした」という野田さん。事業としても震災から直接的に受けた被害は大きく、キリンビール仙台工場は、津波の影響で壊滅的なダメージを受け約200日もの間稼働停止。グループの一員である小岩井乳業や、ビールの原料ホップの一大生産地である遠野市など、もともとつながりの深い地域や団体が、地震や津波の影響を大きく受けていました。キリングループにとっては、多くのお客様が被災したのと同時に、企業としても“被災者”の立場であったからこそ、震災直後の東北の現状を目の当たりにしており、復興は命題だったのだそうです。
「いまだかつてない出来事に、『水が必要なのであれば、水を運べばいいのか』『すぐにでも何か支援できることはないか』と最初は手さぐり状態からのスタートでした。そんな中でも被災地へ頻繁に足を運び、地域の方々や行政、NPO、有識者などとも対話を繰り返していくなかで、ようやくたどり着いた一つの柱が、“地域産業への支援”だったのです」
まず行ったのは、地震や津波で失ってしまった農業機械の購入支援や養殖再開に向けた設備の復旧支援といった、生産を再開するために必要な“ハード面での支援”。その後、第2ステージとして2013年から取り組んでいるのが、生産支援だけにとどまらない農作物・水産物のブランド育成支援、販路拡大支援、次世代の担い手・リーダー育成支援といった“ソフト面での支援”です。このように支援の具体策が変化していった背景には、東北という地域がもともと抱えていた課題にあるのだといいます。

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「東北は、肥沃な大地と豊かな漁場を持ち、1次産業を営む地としてすばらしい条件が揃っています。当然生産される農水産物も品質が良く、これまではブランド化して積極的に発信していかなくても、生業として成り立っていた。言い方が悪いかもしれませんが、コストと労力をかけて工夫しなくても、本当に良い品質のものなので売れていたんです。ところが、震災の影響で生産量の減少、販路の縮小、生産地に対する風評被害などが相まって、ただ生産するだけでは成り立たなくなった。もともと課題であった、“ブランド力・情報発信力の弱さ”が露呈しました。ただ生産能力を回復させるだけでは、根本的な解決には至らないのです」と語るのは、現地に積極的に足を運び続けている古賀さん。ソフト面の支援へと変化していったのは、このことに東北のみなさん自身が気付かれたことが大きいそうです。「震災前は、各企業、各団体がお互いの領域にとどまって、その中でやるべきことをやるのが、ある種の常識だった。ところがそんなことを言っていられる状況ではない。今まで決して交わる事のなかった競合同士や、異業種間、民間と行政との連携など、手と手を取り合って東北を良くしていこうという動きが活発になってきている」と野田さんは感じられているそうです。このような兆しを受けて『キリン絆プロジェクト』では、複合的な企業・団体が協働で地域を盛り上げる取組を積極的に支援しています。

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「まちぐるみの取組が活発な地域ほど、復興のスピードが速い」このようにお二人は感じています。生産・加工・流通・販売までのバリューチェーンが一致団結した異業種間の連携を積極的に推し進めているところなどは、まち全体の産業が盛り上がっていく兆しがみられるのだそうです。1企業ではなし得ないことも、2社、3社と交わり、掛け算のように大きく強くなっていく。それは、日本全国を見渡してみても、他に類をみない動きになりつつあるのではないでしょうか。
震災前に戻すのではなく、未来を見据えて歩みだした東北。おりしもTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)などの動きもあり、国内にとどまらずグローバル環境での競争力が求められてくる、厳しい時代に突入しようとしています。それは、震災を経験した東北だけではなく、全国のあらゆる産業に突きつけられた大きな課題。この問題に果敢に立ち向かっていくような先進的な事例がここ東北から続々と生み出されるのも、そう遠くない話なのかもしれません。

 

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