イノベーターインタビュー 岩佐 大輝 さん
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    岩佐 大輝 (いわさ ひろき) さん

    農業生産法人GRA 代表取締役CEO

    1977年、宮城県山元町生まれ。高校卒業後に上京、フリーのプログラマーを経て大学在学中にITコンサルティングを主業とする会社を設立。東日本大震災後は、特定非営利活動法人GRAおよび農業生産法人 GRAを設立。ICTを駆使した最先端園芸施設を軸に「東北の再創造」をライフワークとするようになる。現在では、日本・インドにて6つの企業を経営。

ひと粒1,000円で売れるイチゴ(ブランド名:ミガキイチゴ)。このイチゴが被災から1年後に建設された最先端園芸施設で生産され、世界から注目を浴びていることをご存じでしょうか。この生産に成功したのが、農業生産法人GRAの岩佐大輝さんです。震災時には東京でIT企業を経営していた岩佐さんにとって、農業は未知の分野でした。しかし、故郷の主要産業であったイチゴの生産を復活させることが、まちのいち早い復興につながると確信。震災から4か月後に農業生産法人を創業しました。そして、現地イチゴ農家の匠の技とICTを融合させ、農業に最適な環境管理の中で高品質なイチゴを安定供給することに成功。現在では、農林水産省から受託された「被災地の復興のための先端技術展開事業」にも取り組んでいます。インド事業ではNECやJICAとアライアンスを組むなど、多くのステークホルダーと共に、数々の挑戦をする岩佐さん。その強さの秘訣と、経営者として“東北”をどう見ているのかを伺いました。

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-なぜ全く知識も経験もない未知の分野に飛び込むことができたのでしょうか。
「ご存じのとおり農業は低生産性と言われています。自分には農業の経験が全くなかったので高いリスクもありました。もし自分が投資対利益というお金だけの目線で物事を考えていたら絶対に農業を行うという選択肢は取れませんでした。ですが、視点を変えると、この事業はお金には代えられない社会価値があると考えました。それは、雇用と地域の発展です」
もともと、イチゴは山元町を代表する大きな産業でした。しかし震災をきっかけに一気に減退。さらに、地域課題である人口流出が以前にも増した早いスピードで深刻化。このままでは故郷が限界集落となってしまう、そんな危機を感じて、岩佐さんは立ち上がりました。
―地域の発展を実現するために岩佐さんが「株式会社」として関わるうえで、どんなことを大事にしていますか。
「もっとも重要なことは、“産業を持続して成長させること”です。行政やNPOなど、地域復興・発展に関わるカタチはいろいろあります。ですが、自分は産業を持続して成長させることが、真の意味での地域発展につながると思っています。産業がなければ、どんなに良いまちの理想を語ってもそこに人は集まりません。地域発展を実現するためには、産業を地元の文化として根付かせ、地元経済を持続的にまわしていく必要があるのです。仕事をする人が集まることで家族ができ、そして家族ができることでコミュニティが発展していくのです」
地域社会の活力が猛烈なスピードで減退する中、それを上回るスピードでイノベーションを起こし地域を活性化させる必要がある、岩佐さんはそう強く語りました。

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“10年間の活動で100社10,000人の雇用を創出”。これが、東北でGRAが掲げる大きなビジョン。
「事業に取り組むうえで、数字上の戦略は大切です。加えて、事業のあるべき姿をイメージすることも重要なのです。たとえば、GRAには、新しいハウスをつくるという計画があります。そのために、働く人の姿、採れる生産物、イチゴが納品されていく光景など、自分の頭の中で明確に映像化している必要があります」
岩佐さんは、GRAの設立時も、会社のあるべき姿を映像化したそうです。東北での活動のように、社会性を帯びることほど、たくさんの人を巻き込まないと実現できない。その時に、まず相手の利益を考え、同時に熱意とイメージできるビジョンを伝えることが大切なのです。
「自分が一人で実現できることはありません。ビジョンに共感してくれる多くの協力者や、仲間のチカラがあってこそ、最初に描いたあるべき姿を実現できるのです」
そして、ビジョンを描くチカラは、会社員ほど持つべきだとも。
「仕事に、どんなビジョンがあるかという上位概念まで考えたほうがいいです。そのほうが具体的な戦略が考えられますから。結果、やりたいことや数字の達成ができる。そういう人がこれから求められるはずです」
東北には、震災から3年という期間で、高い実績やイノベーションを生みだしている企業があります。そういった企業には、必ず多くの人が協力したいと思えるような力強いビジョンがあります。その企業や経営者から学べることは、なかなか得難いことなのではないでしょうか。

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GRAは日本での事業展開と同時にグローバル進出も積極的に挑戦しています。たとえば、インドでは山元町でのICT技術を転用し、イチゴの栽培に成功しました。今年は、中東への進出も予定しています。かつて多くの企業は、地方→東京→海外という順を追った事業展開が成功できるセオリーだと考えられがちでしたが、今はそうではありません。
大切なのは、世界中のどこに成長できるチャンスがあるかということです。
―日本のソーシャルイシューの塊と呼ばれる東北。ここは、個人が成長できるフィールドなのでしょうか。
「その辺の海外よりエキサイティングな経験ができると思いますよ。なぜなら東北は今、たくさんのお金が流れ、いろいろな人が関わり、多くのビジネスが勃興しては消えている場所。海外の新興国で働くことと同じで、学ぶことは多いのです」
ただ、チャンスがあっても、知らない場所や事業に飛び込むことはとても怖いことです。そんな時こそ、怖くても失敗を恐れずに挑戦し続けることが重要だと語ってくれました。
「成功するために、ビジネスの中で普遍的なものはPDCAサイクル。“D”は単に実行するというのではなく、“挑戦”です。失敗するためにチャレンジすることが、成功できる要因。さらにいうと、物凄い量の情報かつ早いスピードで変化をしているマーケットでは、PDCAではなく、PDPDPDCA。つまり、多くの挑戦(D)と失敗を繰り返すことが大切です」
今、岩佐さんは大きなビジョンを持ち、誰よりも強い意志で東北の未来を創っています。
「人生は、本当に一回しかありません。この時代に生きている自分には、今このタイミングで東北に関わらないという選択肢はありませんでした」
東北は今、GRAのようにたくさんの企業が大きなビジョンを持ち、挑戦をしている場所です。もし、自分が成長できるフィールドを探しているのであれば、その場所は東北にあるのかもしれません。

 農業生産法人GRAHP

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