社会福祉法人 キングス・ガーデン宮城

  • Profile

    佐藤 由美子 (さとう ゆみこ)さん

    社会福祉法人キングス・ガーデン宮城 事務長・理事

    1956年、仙台市生まれ。小学生のとき、医師であった父親の転勤に伴い、気仙沼に。1996年、他界した父親の夢を実現させるべく母親が創業。理事長となる。キングス・ガーデン宮城に従業員として入社。1996年より、事務長として事業経営全般を担当。多方面に知己が多く、『一般社団法人気仙沼市 住みよさ創造機構』の委員他、ユネスコの活動なども行っている。

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東北地方太平洋沖地震によって発生した巨大な津波は、気仙沼の沿岸部を飲み込んだ後、内陸部にまで押し寄せ、被害は行政の中心である市役所にまで及んだ。そんな街にあって復旧・復興の拠点の1つとなったのが、キングス・ガーデン宮城が運営する『キングス・タウン』だった。普段は特別養護老人ホームとなっている場所は、駅や市役所からも程近く、行き交う人も多い街の中心街にある。同法人ではすぐさまここを被災した市民やボランティアが寄り合い、励まし合う場所として開放した。誰もがそこに行けば、温かい飲み物と食事を手にすることができ、傷ついた仲間たちに手を差し伸べることができる。そして、明日の希望を少しでも語り合うことができた。『キングス・タウン』での人々の様子は、何度もテレビなどを通して伝えられた。キングス・ガーデン宮城にとって、施設を開放することはごく自然の決定だった。同法人が理念として掲げる『社会福祉法人は、社会の中にあり、社会全体の資源である』を実践することだったからだ。
日本全国の地方都市と同じように、高齢化が進む気仙沼。これからの福祉のあり方はどうあるべきなのか。そこで働く人材には何が期待され、何が求められるのか。佐藤由美子さんに話をうかがった。

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2015年、キングス・ガーデン宮城は創業20周年の節目を迎えた。創業のきっかけは、医師でクリスチャンだった由美子さんの父親雅夫さんと母春子さんが、気仙沼に布教活動に来ていた米国人宣教師と出会ったことだった。「宣教師の方に誘われ、アメリカの西海岸を旅行した際、現地の老人ホームを訪れる機会があったそうです」
ご両親が驚いたのは、そこが自分のイメージしていた老人ホームとはまったく違っていたことだった。施設の中にビリヤード台まで置いてあるような明るく、開放的な雰囲気。施設の周辺には郵便局・学校等が立ち並び、施設を中心としてまちが発展していた。「父はそのホームをすっかり気に入り、自分も年をとったらこんな場所で過ごしたいと思ったようです」
しかしその後、長年多くの人の命を救ってきた雅夫さんの手はレントゲンで被曝し、右手だけでなく命をも奪われてしまった。雅夫さんの思いは春子さんに受け継がれ、悲しみの中可能性を模索しつづけて出会ったのが、法人名にもあるキングス・ガーデンだった。米国にルーツを持つキングス・ガーデンは、キリスト教の愛の精神に根ざす福祉サービスを提供しているネットワークで、日本各地に社会福祉法人を展開する。その考え方に賛同した春子さんは、法人を設立し、最初の施設としてケアハウスを立ち上げた。
「20年前は、要介護者の施設への入居は市の役割で、施設も公的なものがほとんどでした。私たちが立ち上げたケアハウスは県内初だったため、最初は仕組みやサービスが理解されず、利用者も数えるほどでした」
こうした状況の中で、創業メンバーたちは、近隣各地を回り、地域の家々を1軒1軒訪問し、自分たちから情報を発信し、利用者を開拓していった。
「送迎車を家の前に止めないでほしい。サービスを受けていることを知られたくない。といった住民の声もあり、苦労はしました。でも、苦しいと感じたことはなかったですね。自分たちの道は自分たちで切り拓く。そんな気持ちでした。創業メンバーのなかに業界の経験者がほとんどおらず、いい意味で常識に縛られなかったのも良かったかもしれません。経歴はほんとにいろいろ。不動産会社の営業マンや建築設備会社の技術者、なかにはホテルの料理人から転身したメンバーもいたんですよ(笑)」

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風向きが大きく変わったのは、2000年に施行された介護保険法だった。介護サービスは与えられるものから、高齢者自らが選択するものとなったのである。「私たちは最初からそういう気持ちでやっていましたので、新しい仕組みに戸惑うこともなく機敏に対応できたように思います」
キングス・ガーデン宮城は、その後、気仙沼の人たちのニーズの寄り添う形で様々なサービスを立ち上げていき、いまでは福祉全般にわたる16事業を行うまでになっている。いずれの事業も根底に流れているのは、前述した『社会福祉法人は、社会の中にあり、社会全体の資源である』という考え方である。
「『キングス・タウン』を建てる際にも、もっと広い場所を確保できるよう郊外に設けた方がいいのではないかというご意見もいただきました。でも、私たちは老人ホームだからこそ街なかにつくりたいと考え、行政や周辺のみなさんに理解を求めました」
こうして生まれた『キングス・タウン』は、上階部が市営住宅となっており、1階にはコンビニエンスストアも併設。すっかり街に溶け込んでいる。仕事帰りの親御さんや学校帰りの子どもたちが、その足で施設にいるおじいちゃんやおばあちゃんの元を訪れ、触れ合う光景も日常的だ。
「社会福祉を陰のような存在として扱うのは間違っていると思います。「自分の親が年をとったらあそこに行って欲しい、自分も行きたい」と、堂々と言える。そんな場所にしたいと思ってやってきました」
同法人は、2014年秋、高齢者と精神障害をもつ人たちが一緒に暮らす『キングス・ビレッジ』を開設したが、この施設にも同じような想いがある。
「私たちの事業は、行政や病院との連携があってはじめて成立するものですし、法律のもとで行政指導にも従わないといけません。でも、それらの枠に囚われるだけでなく、新しいことを発想し、必要とされていることを見つけ出し、自分たちが良いと思うことをどんどんやっていきたい。前例のないことをやるのは確かに大変な面もありますが、突破してしまえばそれが前例となり、社会福祉の可能性を広げることになります」

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由美子さんが語るキングス・ガーデン宮城のスタンスは、人材に対する考え方にも反映されている。現在同法人には約130名のスタッフが働いているが、いわゆる専門職扱いはしない。
「言うならば、全員が総合福祉サービス職といったところでしょうか。看護職として入社した人が、介護もし、掃除もし、事務もするという格好ですね。もちろん施設間の異動もあります。タイプの異なる施設で、いろんなチームのメンバーとして働くことで、はじめて人としての深みが出てくる。人間の大きさはこの世界でリーダーとなっていく際に、必ず必要となるものです。最終的には、福祉のプロフェッショナルとしてのプライドを持ちながらも、ビジネスや経営について理解し、他業界の人からもきちんと学んでいけるような人材に育っていってほしいと思っています」
キングス・ガーデン宮城では、人材募集でも未経験の方を採用するケースが多い。「私たち創業メンバーもそうでしたが、多様な人材がいた方が面白いですし、いろんなチャレンジも生まれやすいのではないでしょうか」
多様な人材が集まり、一人ひとりが多様な経験を積むことで生まれる組織として柔軟性と強さ。それらは、社会福祉法人に最も求められる“継続性”へとつながっていく。「社会福祉法人は特殊と考えるのではなく、一般企業として経営を考え抜いていくことを日々心がけています」と語る由美子さんの真意も、そこにあるのだろう。

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急速に進む日本の少子高齢化。地方社会は、加えて人口減という課題とも向き合わなければならない。気仙沼の街も近年地元を離れていく人が多くなり、震災以降はやむを得ず離れなければならない住民もいる。
「そういった人たちが、ご両親や祖父母を地元に残しても安心と思えるような環境をつくり上げたい。ふるさと気仙沼を自分たちで守っていかなければならないという思いは年々強くなりますね。創業時に20代、30代だった私たちも、いまや高齢者の入口。私たちの想いを受け継ぎ、さらに発展させていけるような人に出会える機会を心待ちにしています」

 

会社概要

社名 社会福祉法人キングス・ガーデン宮城
本社 宮城県気仙沼市岩月星谷64-3
事業内容 社会福祉事業全般
●トータルケアサービスの提供(ケアハウス・グループホーム・特別養護老人ホーム・デイサービス・訪問看護・訪問介護・シェアハウス・障がい者支援施設等)●前例・規制にとらわれすぎず、自分たちの理想のサービスを実現するにはどうしたらいいか?ということを大切に、考え、実行していきます。
設立 1996年
従業員数 128名(正規職員86名)
ホームページ http://www.kingsgarden.or.jp/
新卒採用募集職種 総合福祉サービス職
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