株式会社石渡商店

  • Profile

    石渡 久師 (いしわた ひさし)さん

    株式会社石渡商店 専務取締役

    1981年、気仙沼生まれ。祖父の代から続くふかひれ一家の三代目。高校時代は気仙沼を離れ、寮生活を送りながら陸上競技に打ち込み選手として部活に没頭。卒業後スノーボードのプロを目指すも、2002年、家業を継ぐことを決意し、入社。父のもとで工場管理、商品開発、ふかひれのすべてを一から学ぶ。東日本大震災後は、石渡商店の大黒柱に。『気仙沼水産資源活用研究会』副会長、『気仙沼ふかひれブランドを守る会』の発起人、中心メンバーになるなど地元の若手リーダーの一人として、震災後の復興活動にも積極的に取り組んでいる。

    気仙沼市の魅力

    気仙沼は、宮城県の北東部に位置し、太平洋に面したまち。日本有数の漁港、気仙沼港があります。遠洋漁業の…

サメの水揚げ日本一を誇る気仙沼で創業して半世紀以上。高品質なふかひれにこだわり、いまでは300種類を超える商品を国内のみならず世界に出荷しています。こんな私たちが目指すのは、ふかひれを超えた『東北の食のプロデューサー』。未来へ向かう私たちの挑戦を紹介します。

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目前に世界三大漁場の一つである三陸沖を控え、東北有数の漁港としても知られる気仙沼港。なかでも、サメの水揚げは国内の約90%を占め、市内にはサメを原料とするさまざまな食品加工会社が栄えてきた。この「サメのまち」で、とくにひれの部分である“ふかひれ”にこだわり、食材としての可能性を切り拓き、地位を高めてきたのが、石渡商店である。2012年に完成した新工場の正面。堂々と掲げられた「ふかひれ」「sharks fin production ishiwata」の文字に、同社の誇りを感じることができる。
工場を支えているのは、ふかひれ職人たち。長年の試行錯誤から生まれた独自の製法と熟練の手業で、300種類を超える商品をつくり、日本のみならず世界中に出荷している。震災後、実質的な会社のかじ取りを任されたのは石渡久師専務。ふかひれで培ってきた技術とネットワークをいかし、次々と新たな試みを仕掛ける若きリーダーに、将来の構想を聞いた。

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石渡商店の創業は、1957年(昭和32)年。久師さんの祖父である正男さんが、それまで研究員として働いていた大手食品会社を退職し、家族とともに神奈川県川崎市から気仙沼へ移住したことから始まる。
「その当時、サメのひれの一部は下種(ゲス)と呼ばれ、捨てられていました。それを祖父がただでもらってきて、何とか商品化できないかといろいろ工夫していたようです」
気仙沼には縁もゆかりもなく、文字通り裸一貫からの出発であったが、先代には持ち前の好奇心と研究熱心さがあった。研究員としての知識と技術をベースに旧来の常識にとらわれない新しい製法や技術を次々に考案。なかでも生のヒレから余分な皮や骨、肉を取り除いたスムキ(素剥)は、石渡商店が開発し、いまでは世界共通の業界用語となった製法だ。当時のふかひれは生のヒレをそのまま乾燥させた「原ビレ」で取引されるのが一般的で、以降の処理は料理人の仕事であったが、スムキによって一気に扱いやすい食材となった。
「研究開発の道を選んだ祖父もそうですが、うちは新しいものをつくるのが好きな家系なんですよ」という久師さんの言葉通り、石渡商店はその後もふかひれという食材の魅力を次々と開花させていく。例えば、中華料理の素材だったふかひれを和食の世界に展開したのも同社である。
「それまでふかひれは大きなものが重宝がられ、小さいものは価値がないとされていました。でも、和食ならその常識を覆せるのではないかと思ったんですね」
和食に合う繊維の太さ、食感、ゼラチンの量…。探究することによって生まれた商品は、茶わん蒸しの食材として注目され、天皇即位を祝う宮中晩餐会に使用されるまでになった。業務用の中華食材でしかなかったふかひれを、家庭用スープにして普及、販売したのも同社である。「新参者ということもあり、最初は奇異な目で見られていた」という同社であるが、徐々に一目置かれる存在となり、やがて気仙沼を代表するふかひれ専門店へと成長を遂げていった。創業半世紀を超え、マーケットをさらに海外まで広げていこうとしていたとき、気仙沼の地を東日本大震災が襲う。

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震災当日、久師さんは中国販路の開拓のため上海に出張中だった。街なかの巨大モニターで、津波に襲われる故郷の映像を茫然と見つめていたという。翌日、成田から20時間以上をかけてようやくたどり着いた久師さんの目に映ったのは、変わり果てた故郷の姿だった。本社社屋、工場、倉庫すべてが津波で流出。祖父の代から苦労して築いてきたものを失い、呆然と佇む父正師さんの落ち込む姿を見て、自分が先頭に立つしかないと覚悟を決めた。瓦礫を片付け、まず行ったのは工場の二階に残っていたストックを商品化すること。復興支援の物産展に出展し、石渡商店の再起をアピールした。その時に、背中を押してくれたのは、世界中のお客様からの応援メッセージだった。
翌年7月には早くも気仙沼に仮工場を建設し、一部商品の製造を再開。久師さんが再開を急いだのは、まず自分たちが立ち直ることで、同業の仲間たちを奮い立たせ、船が安心して気仙沼港に戻れる環境を作るためでもあった。2012年8月には、被災地応援ファンドから資金を調達して新工場もオープン。休職中の従業員を呼び戻し、本格的な生産体制が整えられた。

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新工場での生産が軌道に乗っていく中、久師さんに流れる石渡家の血が騒ぎ始める。「ふかひれは、気仙沼の伝統文化でもある。このふかひれを復活させるだけでなく、自分たちの力でさらに発展させていきたいと思うようになったのです」意欲溢れる久師さんのもと、石渡商店がいま挑戦しているのが無添加の姿煮である。「ふかひれの濃厚さを味わえる究極のシンプル。しかし、実現するにはいくつもの高いハードルを越えなければいけません。だからこそ、やる意味がある」
久師さんの新たな試みは、ふかひれ以外にも広がっている。気仙沼湾の唐桑地区で獲れる良質な牡蠣を使ったオイスターソースもそのひとつ。完熟の旨みをそのまま生かした味と絶賛され、全国水産加工品品評会にて1,500点もの中から農林水産大臣賞(1位)を受賞した。
「ふかひれ製法と熟練の技があったからできた商品ですが、生産者をはじめ地元の美味しいものを、地元の皆さんと一緒に全国に伝えたいという気持ちもありました。商品開発には仮設住宅のお母さんたちにお力も借りています」
食を通じて被災地の産業復興を応援する『Rebirth 東北フードプロジェクト』では、イタリアンやフレンチの一流シェフと、メカジキなどを使った缶詰づくりにも挑戦した。
「一流のシェフたちは志が高く、要望も高い。応えていくのは大変でしたが、これからのヒントがたくさんつまった貴重な体験でした。彼らから学んだのは、本当に良いものをつくり、そこに込められた想いをきちんと伝えれば、必ずわかっていただけるお客様がいること。これまでの自分たちのやり方が間違っていないことを確信しました」

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話をしていくうち、久師さんが描く未来図はどんどん広がっていく。
「気仙沼といえば海の幸というイメージがあると思いますが、じつはそれだけではありません。山の幸も豊富にある。気仙沼の松茸、最高ですよ!でも、まだほとんどの食材に光は当たっていない。これらを組み合わせ、付加価値をつけて商品化していきたいと考えています。将来的には気仙沼の枠を取っ払って、宮城県、さらには東北エリア全体まで広げていけたらいいですね」
久師さんの言葉が絵空事に聞こえないのは、ふかひれを通して仕入れから開発、製造、販売まですべての工程でそれを行ってきた自信があるからだろう。
「創業と同時に香港への輸出も始めているので、世界各地に足掛かりとなる拠点もあります。世界は思っているよりずっと身近ですよ」
久師さんが夢を託す人は、まさに東北の食を世界に広めていくプロデューサーのような立場になるに違いない。一体、どんな人材がふさわしいのだろう。
「自分でビジョンを描くことができ、目標を設定して動ける人が理想ですね。本物をつくろうと思えば、商品化には少なくとも2年はかかります。その間、やらなければならないことはたくさんあります。産地に行って生産者と話し、シェフと商品開発を行い、自社の職人たちと製造方法を生み出し、どのように流通させたらよいかを考える。前提条件として、いろいろな食の世界に精通していなければならない。すべてをやり切れる人と考えると、やはり高望みをしてしまいますね」
果たして、条件を充たす人材はいるのだろうか。
「確かにハードルは高いと思います。でももしいらしたら、一緒にタッグを組む事でこれほど面白い仕事はないと思いますよ。ほんと、楽しみです!」

 

会社概要

社名 株式会社石渡商店
本社 気仙沼市松崎柳沢228-107
事業内容 ●ふかひれ製造加工販売/ふかひれスムキ、各種冷凍排翅、散翅、レトルト加工(排翅、散翅、スープ、姿煮等)缶詰加工、鮫軟骨、ユイピーなど ●通信販売/個人向けにオリジナル商品の販売 ●直営店運営/仙台駅構内のアンテナショップの経営・運営 ●ゴルフ練習場(三峰ゴルフガーデン)の経営・運営
設立 石渡商店創業:1957年(昭和32年)4月 東京出張所開設:1986年(昭和61年)10月 株式会社石渡商店設立:1991年(平成3年)8月
従業員数 34名(正社員:23名) ※2015年4月現在
ホームページ http://www.ishiwatashoten.co.jp/
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