石川電装株式会社

  • Profile

    石川 貴之 (いしかわ たかゆき)さん

    石川電装株式会社 常務取締役

    気仙沼出身。幼いころから父・勇人(現社長)の仕事に打ち込む姿を見て、いつか父と一緒に働きたいという想いを抱く。大学は、電気関係の知識を学ぶため電気学部へ。父からの「まずは自分自身で稼げるようになりなさい」という言葉を受けて、JR関連の電気工事業者に就職。東北各地を転々としながら経験を積み、30歳手前で気仙沼に戻ることを決意。仕事はチームでおこなうもの、誰か一人が頑張っても成果は出ない。前職で学んだ真理を胸に刻み、石川電装の未来づくりに奔走する。

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陸上と船上で、電気の機器や設備はどう違うのかという質問に「まず、電力会社からの電気が通ってないことですね」と笑ってこたえるのは、石川電装の次代を担う常務取締役の石川貴之さんだ。貴之さんは、陸上での電気関係の仕事を経験した後、家業を継ぐために気仙沼に戻って来た。あの震災が起こる数年前のことだ。陸で暮らす我々にはイメージしづらいところだが、船には驚くほど様々な電気機器が備えられている。航行するために必要な照明器具や、魚を呼び寄せる集魚灯だけではない。発電機も、陸上と通信するための通信機も、船員の皆さんが生活するためのキッチン周りやトイレ用のウォシュレットもある。家や職場を丸ごと動かすような電気システムが組み込まれているのだ。石川電装は、それらすべてをワンストップで提供している。新しく造船される際には設計から施工までを担い、長く使用されている船では各機器の修繕やメンテナンスを実施する。船を安全・快適に航行させるためのキープレイヤーと言えるだろう。

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「震災が起こる前に戻ってこれたことは、本当に良かったと思っています。この建物も、柱だけは残りましたが1階はすべて流されて壊滅状態、2階の途中まで波に覆われました。そんなタイミングで素人の私が帰ってきても、足手まといになるだけですからね。たった数年ではありましたが現場経験を積んでいたことで、少しは会社が元に戻るための一助になれたのかなと思っています」

実は現在、気仙沼には新造船を担える企業は石川電装1社しかない。震災前には他にも数社あったのだが、人的・物的被害の大きさから、事業縮小や新船工事断念を余儀なくされたというのだ。

「うちが早期に事業を再開できたのは、幸運というほかありません。社員のご家族で犠牲になった方はいたのですが、社員は誰一人かけることなく助かって。先ほども言った通り建物も柱と2階以上の躯体は残りました。特に社員は、少し前まで『一人前になるには10年かかる』と言われていた仕事ですし、みんな無事でいてくれたことは本当に大きいですね」

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もちろん、他より被害が少なかったといっても、相当のダメージは負った。1階部分はすべて流され、地域には電気も水も通っていない。避難所生活を送る社員も多い中で、一本の電話が鳴った。

「震災後の4月に漁業関係者が集められまして。何かと思ったら、6月のカツオ船が入ってくるまでにいろいろ間に合わせたいと言うんです。そんな無茶な、ですよ」

貴之さんも、現社長である勇人さんも、とても無理だと感じたと言う。なにしろ機器を整備しようにも、海水を洗い流す真水も手に入らないのだ。電気もなければ人もいない。でも、貴之さんたちは、石川電装は、諦めなかった。

「発電機は横浜の友人から借りてきて、水はどうしようかと話していたら、岩手の知人が600Lのポリタンクとエンジン付きのポンプを持ってきてくれたんです。川に行って水を汲め、と。これで水と電気が確保できた。社員も来れる人が来れる時間に来て作業しようということで。もう、コンビニもなければ飲み水もないわけです。それぞれがおにぎりと水筒を持ってきて、少しずつできることを増やしていきました」

新たなノウハウも開発された。通常、海水に浸かったモーターは先ず、塩分を抜くために真水に入れて一昼夜沸騰させる必要がある。しかし、それでは時間がかかってしまい、造船場から運び込まれる膨大な量をさばくことができない。付き合いのあった化学洗浄剤のメーカーと相談し、洗浄剤に空気を入れてバブルにすることで、短時間で塩分を洗い落とす方法にチャレンジ。洗浄基準のマニュアルも新たに作成し、品質を保ちつつスピードアップすることに成功した。気仙沼は、石川電装の踏ん張りもあり、6月にはカツオ船を迎え入れている。

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気仙沼は震災後、空前の造船ラッシュを迎えた。

「大きな船が津波で陸のまん中にあがっているような写真、見たことありますよね。あの時にダメになった船を、どんどん建造しているんです。もちろんここで作っているのは気仙沼だけじゃなく全国の船ですから、通常の仕事も並行して進んでいる。正直に言えば、こなしきれないほどの依頼をいただいています」

貴之さんのこの言葉は、決して大げさではない。先述した通り、気仙沼で新造船の電装を任せられるのは、現時点で石川電装しかいないのだ。つまり、石川電装が音を上げれば、気仙沼で船を作ることは叶わない。船1艘を作り上げることがどれだけ大変なことかは、全社員が肌で知っている。今後1年の建造予定表を最初に渡された時は、誰もが無理だと思ったという。しかし、被災直後のカツオ船に間に合わせた時と同じ使命感が、石川電装を突き動かした。

「最初に意思を表明したのは社長でした。うちらがギブアップしたらもう船は作れないんだぞって。なんとか踏ん張ろうと、げきを飛ばしていました。でも、最終的には社長や私が止めに入るぐらい、社員の皆さんが頑張ってくれた。社長も、毎日夜遅くまで作業を続ける社員を見て、『これ以上残業しなければ間に合わない分は、私が頭を下げて謝りに行くから』と。現場のみんなの使命感に、経営陣が引っ張られた部分もあると思います」

工場長の相場さんは、仕事のやりがいをこう語ってくれた。

「忙しい時期はもちろんしんどいこともあります。暑い時期も寒い時期も、体には負担もかかります。でも、純粋にモノづくりが好きですし、苦労して完成させた船が動き出した時は本当に嬉しい。これ以外の仕事をしている自分は考えられないですね」

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2015年5月、気仙沼に点在していた4つの造船所が合併し、“株式会社みらい造船”が誕生した。その名の通り、これまで日本にほぼ例のない、様々な新技術を搭載したドッグの建設計画が進行中だ。4社ともに、歴史も実績もある造船所だったが、未曽有の震災被害を乗り越えるために、力を合わせる道を選んだ。石川電装は、このみらい造船に、発起人の1社として出資・参画している。

「これまでにない造船所で、これまでにない船を作る。海外の船も作っていく予定です。単に多くの船を作るということに留まらず、これまで気仙沼に縁のなかった人々をここに呼び込むことにもつながります」

過去に数々の船を手掛けてきた石川電装にとっても、まったく新しい挑戦が始まる。

「ここから大切になってくるのは、震災前の状態に戻すことではなく、これまで以上に進化・発展させていくことです。そして今はまさに、誰も経験したことがない新しい造船場ができるタイミング。石川電装は、社長と社員というより、みんな合わせて家族のような関係でやっている会社です。私たちと一緒に、気仙沼という地域を造船業で発展させていくことにやりがいを感じてもらえる人に来てもらえれば嬉しいですね」

船の電気設備を一手に担うということは、ある意味で船員の命を預かる仕事でもある。そのことに、誇りと責任を感じられる人であれば、ここで充実した人生を送ることができるだろう。

会社概要

社名 石川電装株式会社
本社 宮城県気仙沼市港町506番地11号
事業内容 ■船舶電装部門
1.新造船の電気設備工事設計.施工
2.検査工事
3.配電盤、制御盤の整備
4.発電機、電動機の修理(巻き替え可)

■陸上電気部門
1.一般電気設備工事
2.工場プラント計装の設計、施工

■環境事業部門
1.オゾン、紫外線殺菌装置設備工事
2.コージェネレーション工事 
3.ペレットストーブ販売設置
4.木質ペレット燃料販売
設立 1972年12月
ホームページ http://www.i-densou.com/
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