気仙沼地域エネルギー開発株式会社

  • Profile

    髙橋 正樹 (たかはし まさき)さん

    気仙沼地域エネルギー開発株式会社 代表取締役社長

    震災復興計画の重要事業のひとつである『再生可能エネルギーの導入』に向け、木質バイオマス発電事業を進めています。海のまち気仙沼で、山の資源を活用した地産地消エネルギーを創出し、海にも、山にも、まちにも優しい豊かな循環型社会を目指します。

    気仙沼市の魅力

    気仙沼は、宮城県の北東部に位置し、太平洋に面したまち。日本有数の漁港、気仙沼港があります。遠洋漁業の…

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2011年の震災からまもなく、気仙沼市で『震災復興計画』が進められた。大学教授をはじめ、専門分野の学識者を集めた『気仙沼市震災復興会議』のほかに、市民の声を新しいまちづくりに活かそうと在住者を中心に選任された『気仙沼市震災復興市民委員会』が発足。ここで、座長として地域の復興に力を注いだのが、株式会社気仙沼商会で代表を務める髙橋正樹社長だった。産業の再生や医療、教育、地域コミュニティなど様々な問題が提起される中、重点復興事業のひとつとして盛り込まれたのが、『再生可能エネルギーの導入』である。震災では、すべてのエネルギー供給が止まり、暖をとる燃料もないという事態を招いた。一極集中のエネルギー供給に依存するのではなく、地産地消のエネルギー創出が必要だと考えていた髙橋社長は、事業化に奔走。日本でも成功事例の少ない“木質バイオマス発電”に取り組んだ。髙橋社長が目指した、気仙沼の循環型・持続可能型社会とは、いったいどのような挑戦なのだろうか。

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気仙沼湾は山に面したリアス式海岸。海の町として有名な気仙沼だが、山の資源も豊富なのが特徴だ。しかし日本の山々の山林はほとんど手つかずのまま放置されているのが多く、気仙沼も例外ではなかった。山を健康に保つためには、木を伐採し、間引きを行う必要がある。太陽の光が行き届く森林こそ、土砂災害や洪水などの天災を防ぎ、地球温暖化を防止する豊かな山を形成するからだ。だがこれまでは、木を伐採してもそこから出てくる間伐材の引き取り手がいないため、適正な手入れが行われていなかったのだ。そこで髙橋社長が着目したのが、間伐した木材を燃料にして熱と電気を供給する“木質バイオマス発電”であった。まず木材を細かなチップにし、不完全燃焼させることで一酸化炭素ガスを取り出す。そのガスでプラントのエンジンを動かして発電するという仕組みだ。木質バイオマス発電事業は、気仙沼の自然環境保護や林業の活性化にもつながる事業だった。
「“木質バイオマス“は、地産地消のエネルギーを生み出すだけではありません。森林を整備することで、樹木の成長を促し、山から豊富な養分が海へと流れます。気仙沼の海が豊かになれば、漁業もより盛んになり、地域の活性化につながります。この事業が実現すれば、山も、海も、人も、まちも、元気になる循環が生まれると確信しました」
しかし、”木質バイオマス発電“の実現には課題が山積みだった。調査開始当初は、その難易度の高さから外部からは消極的な意見も多かったという。調べてみると、日本国内ではほとんど成功例がない。そこですぐに環境先進国のドイツに渡り、調査を開始した。事業化に際して、最初は調査だけのつもりだった、と話す髙橋社長。しかし、調べれば調べるほど気仙沼の地にふさわしい事業だと感じたという。
「バイオマスに関しては私たちも経験がありませんし、初めてのことばかり。みんなの夢をどう叶えるかを考えていると、アドレナリンが出てしまう性格なんです」
こうして期待と不安を背負って、2012年2月に、気仙沼地域エネルギー開発株式会社は設立された。

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ここで発生する電気エネルギーは東北電力へ売電、そして熱エネルギーは近隣のホテルへと売熱している。熱は保存ができないため、プラントの近隣施設で消費するしか活用方法がない。通常は木材を運びやすい山中にプラントが建設されることが多いので、至近に売熱の供給先がないのだという。この熱を利用する仕組みは、まちの中に建設した小規模プラントだからこそ実現した、日本初の取り組みだ。
「プラント設計ももちろんですが、この事業を成功させるための一番のポイントは、燃料チップにする間伐材の確保でした。間伐できる山はたくさんあるけれど、それぞれ管理しているのは個人林業家や森林組合さんです。これまであまり間伐を行ってこなかった林業関係者の方々に対して、はたしてどれくらいの協力を得ることができるか不安はありました」

森林組合とともにワークショップを重ね、可能性を探りながらアクションプランを設計。すると次第に、ぜひやってほしいという声が多くなっていった。個人林業家に向けては、山や森を考える『森林フォーラム』を開催した。漁業中心のまちで、どれくらいの人が興味を持ってくれるのかと危ぶまれたが、当日は想像を超える80名が参加。そこで得られた『やりたいけれど、個人では難しい』という声に応えて、高知県から講師を招いて講習をおこなうなど、自伐林業家育成事業に発展。参加者は定年退職した人や、本業の傍ら山を所有しているからやってみたいという人など、そのニーズはまだあると感じている。髙橋社長は、こうして実現不可能なように思えることを、着々と可能にしていった。

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間伐材は、市場価格の約2倍の値段で買い取っている。その半分を地域通貨『Reneria(リネリア)』として発券。地元商店街で利用してもらうことで、地域経済の活性化につなげている。取扱いの店舗は170店舗にまでのぼり、その関心の高さと有用性を物語っている。間伐材の確保からチップの生成・流通、発電など、エネルギー発電に関わる上流から下流まですべて一貫して行っているのは、世界でも気仙沼地域エネルギー開発だけだという。誰も経験者がいない、だからこそここまでできた、と語るのは、専務取締役の小野寺誠さん。それまでは、気仙沼商会で総務を担当(現在も取締役を兼務)。大学での専攻は会計学。まったくの未経験でありながら、事業開始とともにわからないまま現場に飛び込んだ。現在はプラントの責任者として汗を流している。
「事業の話が持ち上がったのは震災後でしたから、地域経済を活性化させる活動を行うのは夢でした。だからやりがいがありますし、今は携われたことに感謝しています。私たちにとって初めてのことだらけですからね。わからないからこそ、最初から無理!と決めつけることがないんですよ。知らないからできることの強みを感じます。大変ですけど、楽しいですね。現場に関わるようになって体も使うので、すっかり健康になりました」
現在、気仙沼地域エネルギー開発で働く人の中には、元銀行員、一級建築士など、未経験者も多く在籍している。バイオマスは失敗の歴史。やってみないとわからないことも多く、先入観がかえって新たな挑戦を阻害してしまうこともある。恐れずにやってみたいと思える熱意があれば、きっと成し遂げられないことはない。

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髙橋社長は、気仙沼市内の山林から間伐材を仕入れることが地域内循環につながると考えた。そのため、現在稼働しているプラントの発電量は市内で調達できる間伐材量を見込んだサイズになっているが、今後は近隣の地域に新たなプラントを展開することも視野に入れているという。その他にも今、全国からプラントを見学したいという声が多く寄せられている。しかし、多くの人の協力があってこそ実現するこの事業は、全国に普及させるには課題が多い。だからこそ、気仙沼地域エネルギー開発で若い人に経験を積んでもらい、ここから全国に広がって活躍してくれるような展開ができたら最高に嬉しい、と髙橋社長は語る。
「今、地方における少子化高齢化は深刻です。それでも、便利で楽しく暮らせるような田舎づくりに挑戦したいと思っています。たとえば、まちの人々がもっと暮らしやすくなるように電気バスを走らせるなど、やりたいことは山積みです。一緒に夢を追いかけてくれる人を求めています」
地域を思う気持ちは、大きな力を生む。髙橋社長のもとで、その強さを感じてほしい。

会社概要

社名 気仙沼地域エネルギー開発株式会社
本社 宮城県気仙沼市南町一丁目2番6号
事業内容 ●木材確保・搬出/林業家育成塾による地域の個人自伐林業家の育成事業 ●貯木・チップ化・搬送/気仙沼市内数ヶ所の買取用貯木場での木材買取事業 ●熱電プラント/木質バイオマスエネルギーを用いたエネルギー供給事業 ●地域通貨「Reneria」/地域通貨の発券事業、換金事業
設立 2012年(平成24年2月22日)
ホームページ http://chiiki-energy.co.jp/
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